転職時の求人票に書かれた残業時間が、実際と違う場合はあります。ただし、すべてが意図的な「嘘」とは限りません。集計期間や対象者、平均値・繁忙期の違いによって、入社後の実感と求人票の数字が変わることがあります。
一方で、実態と大きく異なる数字を意図的に示して応募を促している場合は、適切な求人表示とはいえません。残業時間だけで判断せず、「誰の、いつの、どの勤務を集計した数字か」を確認することが大切です。
求人票の残業時間と実際の勤務が違う主な理由
求人票の残業時間が実際と違って見えるのは、主に集計方法や働く部署が異なるためです。
平均値なので、個人の残業時間とは一致しない
求人票の「月平均残業時間」が、全社員や特定の職種を対象にした平均値である場合、入社する部署の残業時間と一致するとは限りません。
たとえば、会社全体の月平均が10時間でも、残業の少ない部署を含めた平均であれば、配属先の部署では30時間以上になる可能性があります。反対に、繁忙期だけ残業が増える部署では、年間平均が低くても特定の時期に長時間勤務になることがあります。
正社員全体の数字で、応募職種が含まれていないことがある
「全社平均」「正社員平均」と書かれていても、営業、事務、店舗、製造など職種ごとの内訳が示されていないことがあります。
応募する職種の残業時間を知りたい場合は、求人票の数字だけでなく、次の点を採用担当者に確認しましょう。
- 応募する職種・部署の月平均残業時間
- 配属予定の拠点や店舗の残業時間
- 繁忙期と通常期の残業時間
- 直近1年間の残業時間の変化
- 残業が発生する主な理由
集計期間が古い、または繁忙期を含んでいない
求人票の残業時間には、どの期間の数字かが明記されていない場合があります。過去の集計値であれば、受注量、社員数、業務内容、勤務体制が現在と変わっている可能性があります。
「直近の実績ですか」「集計期間はいつからいつまでですか」と確認すると、数字の意味を判断しやすくなります。
サービス残業や持ち帰り作業が含まれていないことがある
タイムカードや勤怠システムに記録された時間をもとに残業時間を集計している場合、記録されていない作業時間は数字に反映されません。
始業前の準備、終業後の片付け、持ち帰り仕事、休憩中の対応などが勤務時間として正しく扱われているかは、求人票の残業時間だけでは分かりません。面接では「定時後にどのような作業が残るのか」「始業前に出社する人がいるか」も確認してください。
「固定残業代」と求人票の残業時間は別に確認する
求人票に固定残業代が書かれていても、それは実際の残業時間がその時間になるという意味ではありません。
固定残業代とは、一定時間分の時間外労働に対する賃金を、あらかじめ給与に含めて支払う仕組みです。実際の残業時間が固定残業時間を超えた場合は、制度の条件に従って追加の割増賃金が必要になります。
確認する項目は、次のとおりです。
- 固定残業代に含まれる時間数
- 固定残業代の金額
- 固定残業時間を超えた場合の追加支給
- 基本給と固定残業代の内訳
- 深夜勤務や休日勤務の割増賃金の扱い
たとえば、「月給30万円・固定残業代5万円を含む」と書かれていても、基本給や固定残業時間が分からなければ、給与条件を正確に比較できません。固定残業代の有無と、実際の平均残業時間は分けて確認しましょう。
求人票の残業時間が怪しいときの確認方法
数字だけを信じるのではなく、複数の質問をして回答の具体性を確かめると、実態を判断しやすくなります。
- 対象を確認する。「会社全体、応募職種、配属予定部署のどの数字ですか」と質問します。
- 期間を確認する。「いつからいつまでの実績ですか」「直近の数字ですか」と聞きます。
- 平均以外も確認する。「繁忙期は月何時間ほどですか」「残業が多い月はどの程度ですか」と質問します。
- 勤務実態を確認する。「定時後に残る主な業務は何ですか」「始業前の準備や持ち帰り作業はありますか」と聞きます。
- 書面で確認する。内定後は、労働条件通知書などに記載された勤務時間、休日、賃金、固定残業代の条件を求人票と照らし合わせます。
「平均残業時間は少ない」とだけ説明され、対象部署や集計期間を尋ねても明確な回答がない場合は、求人票の数字だけで判断しないほうがよいでしょう。
残業時間の説明に注意したい求人票の特徴
次の特徴がある場合は、残業時間の数字を追加で確認してください。これだけで虚偽と断定はできませんが、判断材料になります。
- 残業時間の数字だけがあり、対象者や集計期間が書かれていない
- 「残業ほぼなし」とあるのに、固定残業代が長時間分設定されている
- 面接で説明された残業時間と、求人票の記載が違う
- 職種ごとの説明を求めても、会社全体の平均しか示されない
- 勤務時間や固定残業代の内訳を、書面で確認できない
- 入社後に求人票と異なる条件を提示される
特に、求人票では「残業なし」としながら、実際には固定残業代が含まれている場合は、表現と給与条件の両方を確認する必要があります。「残業なし」が、残業が一切ないという意味なのか、固定残業代がないという意味なのかは別問題です。
求人票と実際の残業時間が大きく違った場合
まず、求人票、面接時のメール、雇用条件の書面、勤怠記録などを保存し、どの説明がいつ行われたかを整理します。
内定前後で条件が変わった場合は、採用担当者に「求人票では月平均何時間と記載されていたが、提示された条件や説明と異なる理由を確認したい」と、記録が残る方法で問い合わせるとよいでしょう。
求人募集で、実際の労働条件と著しく異なる内容を示したり、誤解を招く表示をしたりすることは問題になります。ただし、求人票の数字と実際の残業時間に差があるだけで、直ちに違法または故意の嘘と決まるわけではありません。対象、集計期間、職種、契約時の条件を分けて確認する必要があります。
説明が明らかに不自然な場合や、賃金・労働時間の扱いに問題がある場合は、地域の労働局、労働基準監督署、総合労働相談コーナーなどの公的な相談窓口に相談する方法があります。
転職で残業時間を判断するときの結論
求人票の残業時間は、実際と違う場合があります。意図的な虚偽だけでなく、全社平均と配属先の違い、集計期間、繁忙期、記録されていない作業などが差の原因になるためです。
応募前は「応募職種・配属先の数字か」「集計期間はいつか」「繁忙期は何時間か」を確認し、内定後は固定残業代や労働時間を労働条件の書面で確認してください。回答が具体的でなく、求人票と説明が食い違う場合は、入社を急がず、記録を残して判断することが重要です。







