転職先の固定残業代は、求人票の金額だけで判断せず、固定残業代に含まれる残業時間、基本給との内訳、超過分の扱いを確認します。内定後は、労働条件通知書や雇用契約書に同じ内容が明記されているかを確認し、求人票と違う場合は入社前に書面で確認しましょう。
固定残業代を確認する5つの手順
1. 求人票で固定残業代の内訳を見る
まず、求人票の給与欄に、次の内容が書かれているか確認します。
- 固定残業代の金額
- 何時間分の残業代にあたるか
- 基本給の金額
- 固定残業時間を超えた場合の追加支給
- 固定残業代の対象となる割増賃金の種類
「月給30万円」「残業代を含む」とだけ書かれていて、固定残業代の金額や時間が分からない場合は、給与の内訳を確定できません。採用担当者に、固定残業代の金額と対象時間を確認してください。
2. 基本給と固定残業代を分けて確認する
月給の総額だけでなく、基本給と固定残業代を分けて確認します。たとえば、次のような表示なら内訳を読み取れます。
| 項目 | 金額・内容 |
|---|---|
| 月給 | 30万円 |
| 基本給 | 25万円 |
| 固定残業代 | 5万円、30時間分 |
| 30時間を超えた残業 | 超過分を別途支給 |
上の表は説明用の仮定例です。実際に固定残業代が何時間分に相当するかは、会社の労働条件通知書や雇用契約書で確認してください。
「基本給がいくらか分からない」「固定残業代を含めた金額しか書かれていない」という場合、残業代の計算基礎や賞与、昇給の扱いを判断しにくくなります。総額だけでなく、内訳を明示してもらいましょう。
3. 固定残業時間と超過分の支払いを確認する
固定残業代は、決められた時間分の時間外労働に対する割増賃金を、あらかじめ定額で支払う仕組みです。固定残業時間を超えて残業した場合は、通常、超過した時間に対応する割増賃金が別途支払われる契約になっているかを確認します。
確認するときは、次のように具体的に質問します。
固定残業代は何時間分ですか。固定残業時間を超えた場合、超過分は別途支給されますか。基本給と固定残業代の金額も書面で確認できますか。
「固定残業代があるので、何時間働いても追加の残業代は出ない」という説明を受けた場合は注意が必要です。固定残業代の対象時間を超える労働について、追加支給がない契約なのか、どの割増賃金を含むのかを明確にしてください。
4. 労働条件通知書や雇用契約書で確認する
入社を決める前に、求人票ではなく、会社から交付される労働条件通知書や雇用契約書を確認します。特に、次の項目を見比べます。
- 賃金の総額
- 基本給
- 固定残業代の金額
- 固定残業時間
- 固定残業時間を超えた場合の支払い
- 所定労働時間と休日
- 深夜労働や休日労働に対する割増賃金の扱い
求人票と労働条件通知書の内容が異なる場合、違いを説明してもらい、納得できるまで確認します。口頭の説明だけでなく、最終的な労働条件を書面で残すことが大切です。
5. 実際の勤務時間と合っているかを確認する
固定残業時間が、実際の働き方と大きくかけ離れていないかも確認します。面接や面談では、平均的な残業時間だけでなく、繁忙期の残業時間、始業前の準備、終業後の作業、持ち帰り業務の有無を質問しましょう。
確認する質問の例は次のとおりです。
- 通常の月の残業時間は何時間程度ですか。
- 繁忙期は何月で、残業時間はどの程度になりますか。
- 固定残業時間を超える社員はどのくらいいますか。
- 始業前の準備や終業後の作業は勤務時間に含まれますか。
- 残業を申請する方法は何ですか。
固定残業時間が20時間でも、実際の残業が毎月40時間程度あるなら、固定残業代だけで足りるのか、超過分がどのように支払われるのかを重点的に確認する必要があります。
求人票で確認する表示の見方
求人票では、固定残業代が次のような表現で記載されることがあります。
| 表示例 | 確認する点 |
|---|---|
| 固定残業代を含む | 金額と対象時間が省略されていないか |
| みなし残業30時間分を含む | 超過分の追加支給があるか |
| 営業手当として支給 | その手当が何時間分の割増賃金にあたるか |
| 月給に残業代を含む | 基本給、固定残業代、対象時間の内訳 |
「みなし残業」「固定残業」「固定残業手当」など呼び方が違っても、判断するときは、金額、対象時間、超過分の支払いを確認します。名称だけで、適法かどうかや給与の有利不利を判断しないようにしましょう。
固定残業代の金額が妥当か確かめる方法
固定残業代の金額を見るときは、基本給、所定労働時間、固定残業時間、割増率を確認します。固定残業代が何時間分に相当するかは、会社の計算方法や労働条件によって変わるため、金額だけで判断できません。
たとえば、仮に基本給が25万円、1か月の平均所定労働時間が160時間、固定残業時間が20時間で、時間外労働の割増率を25%として計算すると、固定残業代の目安は次のようになります。
25万円 ÷ 160時間 × 1.25 × 20時間 = 39,062.5円
これは計算方法を説明するための仮定例であり、実際の給与額や会社の計算結果を示すものではありません。月平均の所定労働時間、対象となる手当、深夜・休日労働の有無などによって結果は変わります。
会社に確認するときは、「固定残業代は、基本給のいくらを基礎に、何時間分として計算していますか」と尋ねると、内訳を確認しやすくなります。
固定残業代で特に注意したいケース
固定残業時間が書かれていない
固定残業代の金額は書かれていても、対象時間が書かれていない場合があります。この場合、何時間分の残業代が含まれているのか分からないため、入社前に確認が必要です。
「超過分は支給」と書かれていない
超過分の扱いが記載されていない場合、追加の残業代が支払われるのかを確認します。記載がないことだけで、直ちに支払いがないと断定はできませんが、曖昧なまま契約しないことが重要です。
固定残業時間が長い
固定残業時間が長いほど、月給が高く見えても、基本給が低く設定されている可能性があります。月給の総額だけでなく、基本給、固定残業代、実際の平均残業時間を比較してください。
深夜・休日の割増賃金が含まれている
固定残業代が時間外労働だけを対象としているのか、深夜労働や休日労働の割増賃金まで含むのかは、契約内容によって異なります。深夜勤務や休日出勤がある仕事では、対象となる割増賃金の種類を分けて確認しましょう。
固定残業代を理由に残業を強制される
固定残業代は、一定時間の残業を必ず行わなければならないという意味ではありません。実際の残業時間が固定残業時間より少ない場合に、固定残業代を減額するのかどうかは契約内容の確認が必要ですが、固定残業代があることだけを理由に長時間労働を当然と考えないようにしましょう。
採用担当者への確認文例
転職先に確認するときは、次の文面を使えます。
提示いただいた月給には固定残業代が含まれているとのことですが、固定残業代の金額、対象となる時間数、対象となる割増賃金の種類、時間数を超えた場合の追加支給の有無を確認したいです。基本給との内訳が分かる労働条件通知書または雇用契約書も確認できますか。
確認した回答は、メールなど記録が残る方法で受け取ると、求人票や契約書との違いを後から比較できます。
転職先の固定残業代を判断するポイント
最初に確認するのは、「固定残業代はいくらか」ではなく、「何時間分で、超過分はいくら支払われるか」です。そのうえで、基本給、実際の残業時間、深夜・休日労働の扱いを比較します。
- 固定残業代の金額と対象時間が明記されているか
- 基本給と固定残業代が分けて示されているか
- 固定残業時間を超えた分が別途支給されるか
- 労働条件通知書や雇用契約書に同じ内容があるか
- 実際の残業時間や繁忙期の働き方と合っているか
この5点を確認しても内容が曖昧な場合は、入社を決める前に書面で説明を求めましょう。給与の総額だけでなく、内訳と働く時間を確認することが、転職先の固定残業代を判断する基本です。







