残業なしの条件は試用期間中も適用される?

残業なしの条件は試用期間中も適用される?

「残業なし」という条件は、原則として試用期間中も適用されます。試用期間だからといって、会社が残業に関する条件を一方的に変更できるわけではありません。ただし、「残業なし」が法律上の残業を一切禁止する約束なのか、通常は残業がないという求人上の目安なのかによって、判断は変わります。

試用期間中も労働条件は原則として同じ

試用期間は、採用後の適性や勤務状況を確認する期間です。通常は本採用前の期間として扱われますが、試用期間中も会社と労働者の雇用契約は成立しています。

そのため、雇用契約書や労働条件通知書に「残業なし」「時間外労働なし」などと記載されている場合、その条件は試用期間中にも及ぶと考えるのが基本です。試用期間であることだけを理由に、契約にない残業を当然に命じられるわけではありません。

「残業なし」の意味によって結論が変わる

求人票や面接で使われる「残業なし」は、必ずしも同じ意味ではありません。まず、どの資料に、どのような表現で書かれているかを確認してください。

記載や説明の例 考え方
時間外労働なし、残業を命じない 残業をさせない契約上の条件と解釈できる可能性が高い
残業月0時間、原則残業なし 通常は残業がないという目安の可能性があり、例外の有無を確認する必要がある
残業ほぼなし、月平均○時間 残業が発生することを前提にした説明と考えられる
固定残業代を含む 一定時間分の残業を想定しているため、「残業なし」とは別の条件

特に、求人票の「残業なし」と、採用後に交付された労働条件通知書の内容が異なる場合は、後者の記載や実際に合意した条件を確認する必要があります。求人票だけでなく、雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、採用時のメールや説明も保存しておきましょう。

試用期間中でも残業命令が有効になる条件

「残業なし」という明確な合意がない場合、試用期間中でも、一定の条件を満たせば残業を命じられることがあります。

労働基準法では、原則として1日8時間、1週40時間を超えて働かせることはできません。法定労働時間を超える残業を命じるには、原則として会社と労働者の代表などとの間で時間外・休日労働に関する協定、いわゆる36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

また、36協定があっても、会社が無制限に残業を命じられるわけではありません。36協定の範囲、就業規則や雇用契約の内容、業務上の必要性などを確認する必要があります。

法定労働時間を超える残業には、原則として割増賃金の支払いも必要です。試用期間中であることを理由に、割増賃金を支払わなくてよいことにはなりません。

「残業なし」と書かれていても確認したい3つの条件

1. 試用期間中の勤務時間が別に定められていないか

労働条件通知書に「試用期間中は勤務時間が異なる」「試用期間中はシフト勤務」などの記載がないか確認します。試用期間中だけ別の勤務条件が適用される合意があれば、その内容が判断材料になります。

2. 固定残業代が含まれていないか

給与に固定残業代やみなし残業代が含まれている場合、会社が一定時間の時間外労働を想定している可能性があります。固定残業代がある場合は、固定残業時間、金額、超過分の追加支給の有無を確認してください。

「残業なし」と説明された一方で、給与欄に固定残業代が記載されている場合は、条件に食い違いがあります。会社に、残業の有無と固定残業代の扱いを文書で確認するのが安全です。

3. 法定内残業と法定時間外労働を混同していないか

所定労働時間が1日7時間の場合に、1時間延長して働いても、1日8時間以内であれば法定労働時間を超えないことがあります。これは一般に「法定内残業」と呼ばれますが、所定労働時間を超えているため、会社の就業規則や契約上の扱いを確認する必要があります。

「残業なし」という条件が、法定労働時間を超える勤務だけを指すのか、所定労働時間を少しでも超える勤務を含めて禁止するのかは、契約や会社の説明によって判断します。

試用期間中に残業を求められたときの確認手順

  1. 契約書類を確認する。労働条件通知書、雇用契約書、就業規則で、勤務時間、時間外労働、固定残業代、試用期間中の特別条件を確認します。
  2. 残業の内容を記録する。日付、始業・終業時刻、誰からどのような指示を受けたか、実際に働いた時間を記録します。
  3. 会社に条件を確認する。「採用時に残業なしと説明を受けました。試用期間中の時間外労働の扱いを確認したいです」と、メールなど記録が残る方法で尋ねます。
  4. 賃金の支払いを確認する。実際に残業した場合は、給与明細で時間外労働分や割増賃金が反映されているか確認します。
  5. 解決しない場合は相談する。契約と異なる残業の強制、賃金未払い、長時間労働などがある場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーなどの公的な相談窓口に、契約書類と勤務記録を持って相談します。

断ると不利益な扱いを受ける可能性はある?

試用期間中でも、残業を断ったことだけで直ちに適法な解雇になるわけではありません。一方で、残業命令が契約や就業規則などに基づき、法令上の条件も満たしている場合は、正当な理由なく拒否したことが問題になる可能性があります。

反対に、契約で残業なしと明確に定められている、36協定が必要なのに締結・届け出がない、残業代が支払われないといった事情があれば、会社の対応に問題がある可能性があります。試用期間だからという理由だけで、会社の判断がすべて正当になるわけではありません。

判断のポイント

残業なしの条件が試用期間中も適用されるかは、「残業なし」という言葉だけでなく、雇用契約書や労働条件通知書に何と書かれているかで判断します。

  • 「時間外労働なし」「残業を命じない」と明確に合意している場合は、試用期間中も適用される可能性が高い
  • 「原則なし」「ほぼなし」は、例外的な残業を含む可能性がある
  • 固定残業代がある場合は、残業なしの説明と矛盾しないか確認する
  • 実際に残業した場合は、勤務時間と会社の指示を記録する

まずは、採用時の書類と求人・面接での説明を照らし合わせ、残業の条件を具体的に確認してください。