固定残業代に含まれる時間を超えて働いた場合、超過分の残業代は原則として支払われます。固定残業代は、あらかじめ決めた時間分の残業代を定額で支払う仕組みであり、それを理由に追加の残業代を一切支払わなくてよいわけではありません。
ただし、実際の残業時間が固定残業代の対象時間以内なら、通常は固定残業代に加えて別の残業代が支払われるわけではありません。雇用契約や就業規則で、対象時間・金額・対象となる割増賃金が明確になっているかも確認が必要です。
固定残業代を超えた分が支払われる仕組み
固定残業代は、一定時間分の時間外労働に対する割増賃金を、毎月固定額で支払うものです。実際の残業時間がその時間を超えたときは、固定残業代でカバーされていない部分を追加で計算します。
たとえば、月20時間分の固定残業代が設定されていて、実際の時間外労働が25時間だった場合、原則として5時間分の残業代が追加で必要です。
この考え方は、使用者が法定労働時間を超えて働かせた場合に、割増賃金を支払うよう定めた労働基準法第37条に基づきます。詳しくは労働基準法で確認できます。
超過分の残業代を計算する方法
追加で支払われる金額は、固定残業代の対象時間を超えた時間について、通常の賃金に法定の割増率を掛けて計算します。
- 実際の時間外労働の時間を確認する
- 固定残業代に含まれる時間を差し引く
- 残った時間について、基礎となる賃金と割増率から残業代を計算する
- 給与明細や実際の支給額と照らし合わせる
計算式は、概ね次のとおりです。
超過分の残業代 =(実際の時間外労働時間-固定残業代の対象時間)×1時間あたりの基礎賃金×割増率
たとえば、固定残業代が20時間分で、実際の時間外労働が25時間だった場合、超過時間は5時間です。1時間あたりの基礎賃金が1,500円、割増率が25%であれば、計算例は「5時間×1,500円×1.25=9,375円」となります。
この金額は説明のための仮定例です。実際の計算では、賃金の種類、深夜労働や休日労働の有無、月平均所定労働時間などによって変わります。
固定残業代の対象時間以内なら追加の支払いはないのか
実際の残業時間が固定残業代の対象時間以内であれば、通常は固定残業代に加えて同じ残業時間分を二重に支払う必要はありません。固定残業代は、対象時間分の割増賃金を先に支払っているためです。
ただし、固定残業代の金額が法定の割増賃金に足りない場合や、固定残業代の対象時間・金額が雇用契約などで明確にされていない場合は、別の判断になる可能性があります。
| 実際の時間外労働 | 固定残業代の対象時間 | 原則的な扱い |
|---|---|---|
| 15時間 | 20時間 | 固定残業代に含まれる範囲で、追加分は通常なし |
| 20時間 | 20時間 | 固定残業代に含まれる範囲 |
| 25時間 | 20時間 | 超過した5時間分を追加計算 |
固定残業代が有効と判断されるために確認したいこと
固定残業代として扱うには、少なくとも「通常の賃金部分」と「割増賃金に当たる部分」が区別され、何時間分の残業代なのか、いくら支払うのかが分かることが重要です。
雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、給与明細などで、次の項目を確認してください。
- 固定残業代の金額
- 何時間分の残業代に当たるのか
- 時間外労働、休日労働、深夜労働のどれが対象か
- 対象時間を超えた場合に追加で支払うことが定められているか
- 基本給と固定残業代が分けて表示されているか
「基本給に固定残業代を含む」とだけ書かれ、対象時間や金額が分からない場合は、固定残業代の有効性や未払い残業代の計算に影響する可能性があります。
休日労働や深夜労働は別に確認する
固定残業代が時間外労働だけを対象としている場合、法定休日に働いた分や、深夜の時間帯に働いた分まで含まれるとは限りません。
法定休日労働には休日労働の割増率、深夜労働には深夜の割増率が関係します。固定残業代がこれらの割増賃金を含む契約なのか、対象外として別途計算する契約なのかを確認してください。
契約書などに対象範囲の記載がない場合、「固定残業代だから休日や深夜の割増分もすべて支払い済み」とは判断できません。
超過分が支払われていないときに確認する順番
まず、実際に働いた時間と固定残業代の対象時間を同じ期間で比べます。単にタイムカードの勤務時間を見るだけでなく、休憩時間を除いた労働時間や、法定労働時間を超えた時間を確認することが大切です。
- 雇用契約書や労働条件通知書で、固定残業代の対象時間と金額を確認する
- タイムカード、勤怠システム、業務記録、メール送信時刻などから実労働時間を整理する
- 給与明細で固定残業代と追加の残業代の支給欄を確認する
- 実際の時間外労働から固定残業代の対象時間を差し引く
- 超過分があるのに支払われていない場合は、会社に計算根拠と支払い状況を確認する
会社に確認するときは、「何時間分の固定残業代が設定されていて、実際の時間外労働が何時間だったか」「超過分をどのように計算したか」を具体的に尋ねると、話を整理しやすくなります。
固定残業代を超えた分の支払いを請求できる期間にも注意
未払い残業代には、請求できる期間についての制限があります。期間は賃金の支払日や請求する賃金の時期などによって判断されるため、古い分から順に、給与明細や勤怠記録を保管しておくことが重要です。
会社との確認だけで解決しない場合や、固定残業代の扱いが複雑な場合は、労働基準監督署や労働問題を扱う専門家に、契約書と勤怠記録を見せて相談してください。
まとめ
固定残業代の対象時間を超えて働いた分の残業代は、原則として追加で支払われます。確認するポイントは、固定残業代が何時間分・いくらに設定されているか、実際の時間外労働が何時間だったか、休日・深夜労働が含まれているかです。
最初に、雇用契約書や給与明細、勤怠記録をそろえ、「実際の時間外労働-固定残業代の対象時間」で超過時間を確認してください。







